今回はとっても
ダイナミックなお話。
患者さんは30代。
消化器系の難病が原因で、かれこれ2ヶ月以上も入院生活を強いられている方。
長い間、ICUにいらしたけど、最近やっとICUから普通の病棟へ移動。
ところが・・・
普通の病棟で過ごしたのもほんの数日。
いきなり
容態急変!
血圧が急降下してICUに逆戻り!!
原因究明のため、CTスキャンに送ることに。
すると、CTスキャンで
恐ろしい事実発見!!
それは・・・
心タンポナーデ
簡単に言えば、心臓を保護している
心嚢という袋の中に体液や血液などが溜まり、
水風船の様に膨らんだその袋の中に
溜まった液で心臓が圧迫されてしまう。
その圧迫によって動く場を失った
心臓のポンプ機能は低下し、
最終的には死に至る恐ろしい状態。
Science Oasis に投稿された画像の中から、
とっても解りやすい映像を見つけたので、ご紹介。
見れない方は、
こちらのリンクを試してください。
http://www.youtube.com/watch?v=qwB1tc8C_VU&feature=player_embedded
とにかく・・・
この患者さんは
一刻を争う危機的状態!!!
OR(手術室)にて
緊急開胸手術!!!
・・・という案がでたものの、
なにしろ一刻を争うので、その準備をする時間も勿体無い!
とのことで・・・
病室内にて、緊急に
心嚢穿刺 決行!!!
心嚢穿刺・・・。
つまりは、その膨らんだ心嚢に
針をブスッと一刺しして溜まった液を外に逃がす、
という手法。
これまで
肺気胸 に針を刺す、
胸腔穿刺が病室で行われているのは何度となく見た。
でもさ、心嚢穿刺って、あのバックンバックン動いている心臓目がけて針を刺すの?!
きゃ~!! 想像しただけで恐ろしや!!!
心臓と心嚢膜の間にうまく針を入れなくてはならない訳だけど、
もしちょっとズレて心臓傷つけちゃったら・・・
ぞ~~っ。。。
といろいろ思い巡らせてしまった私ですが・・・
何にせよ、一刻を争う状態な訳で。。。
胸腔外科の外科医が来て
ブスッと一発!
そしたら一気に
1リッター以上の血液がドバドバ溢れでて来たそうです!
あ、「そうです」というのは、私がシフトに入る数時間前に起きたことで、
この話は全部夜勤のナースの申し送りからです。
まるでそこに居たかのように臨場感いっぱいに話しちゃってますが。。。
針を刺し、そのままカテーテルを心嚢に残した状態にしたのですが、
結局そのカテーテルが抜かれるまでの間、
2リットル近くの血液が出てきた。
胸腔外科医でもビックリ仰天の、
記録的レコードらしいです。
でも、この心嚢に溜まり心臓を圧迫していた血液を取り出してすぐ、
心臓はバックンバックン動けるスペースを取り戻したため、
また元気に動き始めポンプ機能挽回!
ポンプ機能低下により体に送り出す血液量が低下したため起きていた血圧低下も即回復!
この患者さんは一命を取り留めたのでした~☆
あと、数時間遅れたら手の届かないところに行っちゃってたかもしれない命。
ICUにいると、本当に
一秒一秒の大切さを噛み締めることが多々有ります。
この患者さん、いろいろあったダイナミックな夜が明け、さぞかしお疲れだったのでしょう。
私が担当した昼間はスヤスヤとお休みになっていました。
そりゃ~、疲れたよねぇ、あんなことあったんだもん。。。
なにはともあれ、大事に至らなくて(大事は大事だけど・・・それ以上の)
本当に安心しました。
どうしてこの
タンポナーデが起きたのか、ドクターもまだ原因模索中ですが、
なんとか原因解明に至り、今後もうこんなことが起こりませんように・・・。
ただ・・・、ナースとしては・・・
華麗な心嚢穿刺の瞬間、やっぱりちょっと見てみたかったなぁ~。。。
な~んて気持ちも正直あったりなんかするかも。。。
すみませんっ!! (^^ ゞ
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この記事へのコメント
心タンポナーデ
映像、すごくよくわかります。こんな状態の患者さん、ほんとうに苦しく、一刻を争いますよね(汗)
2リットルの血液が排出されて、患者さんは大丈夫だったんでしょうか
とても心配になってしまいました
患者さんの辛さ苦しみなど、支えになってあげられる仕事って素敵ですね☆
Re:心タンポナーデ
私も日本にいた頃は、タンポナーデって知ってはいるけどいまいちピンときてない感じでした。 でも、こちらの大学で看護を勉強したときに少しずつ概念が見えてきて、更にICUに勤めるようになってから症状との関連も含めハッキリと見えてくるようになりました。
今の時代はこういった映像までネットで簡単に観れるようになり、教科書の上で文字からどんなに想像しても分かりにくかったことが、勉強しやすくなったと思います。 文明の利器に感謝!
2リットルの血を失って大丈夫?というご心配。 素晴らしい目の付け所ですねぇ~! 2単位の輸血をしました。 心嚢穿刺の際、一気に出てきたのは2リットルのうち、1.3リットル。 腹腔穿刺とかでもそうですが、あまり一気に大量の体液を抜くと危険ですよね。 このタンポナーデの場合もそれは例外ではないのですが、既に心臓がかなり圧迫され心臓が動けず極度の低血圧になっていたため、本来なら多種の穿刺の副作用として心配される低血圧もこのタンポナーデを起こした液を抜くことによって逆に血圧が上昇し、すぐに通常血圧に戻ることができたのです。
やっぱり、現場で実際に起きたケースを挙げて症例を考えていくと解り易いし、覚え易いですよね。 これからもどんどんこういったケースをご紹介して看護や医療をお勉強中の方のちょっとした手助けになれればと思います。 今後とも宜しくお願いしますね☆
無題
昔は助けられなかった患者さんのことを思い泣いてたこともありました。 大変なお仕事です。尊敬します。
Re:無題
旦那様も医療系なんですね! 自分で言うのも変ですが、家族に一人でも医療系の方がいると、いろいろ心強いですよね。
でもその反面、そのストレスをたまに家族とシェアしていかなくてはならない日もあるんですよね。 私は出来るだけ仕事の話をプライベートに持ち込まない努力はしていますが、それでもやっぱり一人で消化できる許容範囲を超えている悲しいこととかもあるんです。
そういうときに気持ちを察してくれたり、やさしくハグしてくれる家族の存在って本当にありがたいものなんです。 きっと旦那様もtomotanさんの存在に深く感謝していたことと思いますよ!