カリフォルニアの大学病院にあるICUで看護師をして7年目。 ICUの中で起こる日々のドラマ。 アメリカの命の現場から生の声をお届け! アメリカ医療の裏側やナースの日常を覗いてみませんか? まずは「ハイライト」内の記事からチェック!!
鼻と脳を侵すムコール症の症状としては、痛み、発熱、眼窩(がんか)の感染(眼窩蜂巣炎)による眼球突出などがあります。鼻から膿が出て、口の天井(口蓋[こうがい])、眼窩や副鼻腔周辺の顔の骨、2つの鼻孔を仕切っている壁の破壊も起こります。脳に感染すると、けいれん発作、部分麻痺(まひ)、昏睡(こんすい)が起こります。
肺のムコール症は、発熱、せき、ときに呼吸困難を起こします。
ウェブで見つけた感染例の写真をアップしておきます。
← ispub.com より拝借
典型的な所見です。
私が以前受け持ったムコール症患者さんもこんな感じでした。
目と鼻が Mucor に蝕まれています。
外見からの判断は難しいですが、鼻の骨や副鼻腔まで感染が広がっていそうです。
結構過激な画像が多々あったため、比較的刺激の少ない画像を1枚だけお借りしました。
ムコール症は英語で Mucormycosis。
もっと詳しい病変所見を見るには、Mucormycosis で画像をググってください。
ちなみに、Mucor は、カタカナ表記にすると一番近い発音が、ミューコァー ・・・かな。
今回の患者さんの場合、ムコール症でよく見られる目・鼻・口の病変はなく、
メインに見られたのは、手の指と腰の辺りに出来た、赤黒い大きな水膨れでした。
また、今まで病原菌が特定できなかった肺炎を起こしていますし、
意識レベルの低下/昏睡も、Mucor が肺や脳まで侵食している可能性を考えると
いろいろなことにあっさり理由がつきます。
今まで何度か痰や血液の培養検査をしていますが、なかなか正体を現さなかったこの犯人。
この患者さんの体を今にも食い尽くそうとしていた訳です。
この患者さん、既に重症のため、抗生剤の効き目もどれだけ見られるか分かりませんが、
数日中にお亡くなりになる可能性が、残念ながら高いです。
この患者さんがMucor に感染したという悲しい事実を知り、
その日の私は溜め息が絶えませんでした。
もちろん患者さんの病室ではそんな姿を見せられないけれど。。。
この患者さんの展望としては、おそらく翌日にでも家族会議を開き、
現状を率直に丁寧に説明した上で、安楽死というオプションを提示することになると思います。
コントロール出来ない病気が相手だから仕方ないのだけれど、
そんな時にはどうしても、看護師としての無力さを感じてしまいます。。。
それでもまだ、出来る看護は見つければたくさんあるはず!
病気の治療のお手伝いだけが看護ではありませんから!
例えば、亡くなるまでの間、患者さんをできるだけ痛みのない快適な状態にしてあげること。
患者さんが昏睡状態にあるので、患者さんは何も言えません。
たとえ呼吸が辛くても、どこかが痛くても、何も言えません。
痛み止めの点滴の量をバイタルを見ながら調節してあげたり、
シーツが体の下でぐちゃぐちゃになって肌を刺激していないかチェックするとか、
床ずれで体が痛くならないように、頻繁に寝返りを打たせてあげるとか、
耳が枕に潰れて痛くなっていないかとか、
気管チューブが入って乾いた口の中を湿らせたりきれいにしてあげるとか・・・
すごく細々としたことだけれど、気づいてあげられることってたくさんあると思います。
大事なのは患者さんのケアだけではありません。
昏睡&瀕死状態にある患者さんの家族のココロのサポート。
これは本当に大切。
家族(親戚・友達・恋人などなど全て含めて)は大切な人を失ってしまう恐怖に、
パニック状態で、ひどいストレスや悲しみを感じているはずです。
その家族に対しての声掛け、説明、いろいろな気配り・・・
ナースの仕事として欠かせません。
こんな風に、挙げればキリがないくらい、ナースだから出来ることってたくさんあるんです!
死んでしまう!と分かった患者さんに対しても、
これからも自分の出来る限り精一杯の看護をしていけるよう頑張りたいです!!
ナースの心得、その2。
病気の治療のお手伝いだけが看護ではない!!
といった感じで、里帰り直後の仕事復帰は、命を扱う仕事ということもあり、とっても緊張するのです。
今朝仕事行く前に、彼にこの緊張の胸の内を携帯メールで伝えると、
「頑張って社会復帰しましょー!!」
の返信。。。
ちょ、ちょっとぉ~!! 社会復帰ってあなた・・・
私は服役囚か?!
昨日私が『時差ぼけ』と称していた異常な眠さは、時差ぼけじゃなくて
『幸せボケの現実逃避』
だって言われるし。。。
日本で「幸せ過ぎた3週間から現実に戻るのを体がヤダ!って言ってる」んですと!!
的を得てる様な、小バカにされている様な・・・ (-_-;)
まあ、それはそれとして・・・
2011年の仕事始め、難なく無事終了~!
患者さんは2人受け持ったけど、2人とも重症ではなく、いい人達だったし。
良かった良かった!
心配された上記の4大不安も全然なかったし。
今までで一番スンナリといった仕事復帰だったかな。
あ、ちなみに・・・
今回はうっかりしてて忘れてしまいましたが、
長期休暇を取った後のシフトの前日、必ず仕事先に電話を入れるんです。
「4週間仕事してなくて、仕事戻るのに緊張しちゃってるから、簡単な患者さんちょうだい!」って。
日本人の感覚からいったら、こういうことは言語道断なのかもしれないけれど、
そこは何でも言わなきゃ損する大国、アメリカ。
「何甘えたこと言っとんじゃ!!」と思われることも全然なく、
ちゃんと受け持つ患者さんを考慮してくれます。
極端に言えば、これは逆にプロ意識から来る発言だとも思っています。
自分が普段の100%の力を出せないかもしれない、と思うときはその旨を伝えて
普段の感覚が戻るまで、重症度の低い患者さんを受け持つ。
何よりも、患者さんの安全重視ってことです。
自分の置かれている状況を見据えて、臨機応変に動いたり、発言したりしてワガママをきいてもらうことも時には大切なんですよね。
特に人の命を扱う職業においては。
ということで、私の仕事復帰、何とかなったわけですが、
ウチのICUの患者さんの内、
ずっと吠えてる患者さんがいました。。。
詳しくは分からないけど、肉体的だけでなく精神的にも病んでしまった方なのかな。。。
放送禁止用語、遠吠え、うめき声のオンパレード。
それを1日中耳にして、
ICUという戦場にまた戻って来たな。。。
という実感がフツフツと湧いてきました。。。