カリフォルニアの大学病院にあるICUで看護師をして7年目。 ICUの中で起こる日々のドラマ。 アメリカの命の現場から生の声をお届け! アメリカ医療の裏側やナースの日常を覗いてみませんか? まずは「ハイライト」内の記事からチェック!!
今日は感謝祭で世間は休日。
感謝祭は、毎年決まって11月の第4木曜日です。
(感謝祭の説明 By Wiki)
アメリカではクリスマスに匹敵するほどの大きな休日で、
家族で集まって七面鳥を食べるのが一般的。
もちろん、病気はそんなことにはお構いなしなので、
ICUはいつもと変わらずフル稼働。
強いて言えば、スタッフ同士で食べ物や飲み物を休憩室に持ち寄って、
皆交代でその食べ物を食べてちょっとしたパーティー気分を味わうくらいです。
なので、今日働いてるナースは、前日か翌日にお祝いする人がほとんど。
さて、そんな感謝祭に受け持った本日の患者さん。
C型肝炎による肝不全、腎不全、大腸炎、胸水貯留、糖尿病、甲状腺機能低下、
などメインのものだけでもたくさんの病気を併発している方。
肺には呼吸器、腎臓には24時間稼働の人工透析、
そして更に昇圧剤や鎮静剤、栄養剤の点滴、
鼻には胃までつながる長い胃チューブ。
お尻には骨まで貫通したひどい床ずれ。
腹水でお腹が膨れながらも、
肝不全患者特有の浅黒い肌をしたガリガリに痩せ細った体には
いろいろな種類のたくさんの機械が繋がれています。
ICU典型的な機械に繋がれてないと生きていけない患者さん。
当たり前ですが、この全部の機械を操作・管理するのはナースの仕事。
1分たりとも気を抜けません!
この患者さん、こんなに重症だけどまだ51歳。
19の頃から病気で、既に3回も腎臓移植を受けたそうです。
でもその移植した腎臓が拒絶反応を起こして何度もダメになって、
今の人口透析に至ってるのです。
30年以上もずっと病気と闘ってる訳ですね。
残念なことに、その闘病生活にもそろそろ限界が見えてきているようです。
病状はどんどん悪くなるばかりで、
呼吸器や透析の機械から離れることが今後も出来ないであろう予後。
こんな時は、QOL(Quolity Of Life)を考えて、
安楽死やPalliative Careというのをドクターが家族に提案します。
Palliative Careというのは、日本語でも聞きなれない言葉でしょうが、
和訳で緩和ケアとか対症療法という言葉になるそうです。
簡単に言えば、
『体に負担のかかる治療または全部の病気治療行為をやめて、死ぬまで痛みの無い状態をキープしてあげる療法』
とでも言いましょうか。
これはあくまでも私なりの説明なので、
厳密に合ってるかどうかは責任とれませんが。。。
ちなみに、緩和ケアというのは大きなくくりで、
ホスピスもそのうちの1つです。
患者さんの話に戻りますが、
この患者さんの家族と緩和ケア専門のドクターの間で、
今日家族会議がありました。
もちろんナースとして私もその会議に参加。
まず、ドクターが今のとっても乏しい予後の状況を説明。
そして、家族の気持ちや意見を聞く。
家族は8人くらい居たけど、全員口を揃えて、
「あんな辛い思いをしてる姿をもう見たくない」と。
と同時に
「でも彼女が(患者)それでも治療を続けたいって言うなら、その意見を尊重する。今までずっとずっと闘って来たから、ここで諦めたくないんだと思う。」
とも言ってました。
当の患者さん自身、
まだ治療をやめたくないという意思表示を今朝もしていたようです。
で、それを踏まえた上で大きな疑問となってくるのは、
患者さん自身がどれだけ今の状況を理解・判断する能力を持っているのか、
ということ。
意識レベルが低かったりして判断能力がもし欠けていれば、
患者さんの意志よりも家族の意志の方が大きく反映されます。
肝不全の患者さんは、毒素が脳に溜まって精神混乱状態になったりするし、
この患者さんは痛み止めの点滴も受けているので、
その薬で朦朧とした状態になったりしている可能性もあります。
患者さんをよく知る家族の意見は、1人を除いて皆、
患者さんに今現在判断能力がある、とのことでした。
それを踏まえて、このドクターが実際に患者さんを診察して
最終確認を取ることに。
結局、患者さんに判断能力がある、との意見で固まり、
治療を続けるという患者さんの意志に従うことになりました。
しょっちゅう痛い思いを強いられてる患者さんを目の当たりにしてる私は、
彼女の命に対する奮闘振りに、頭が下がる思いです。
でもその一方で、家族の葛藤も十分理解できます。
患者さんのことを愛しているだけに、痛い思いをするのを見るのが辛い。
でも絶対死んで欲しくないし、頑張っているのなら応援してあげたい。
いろんな気持ちが溢れて、交錯して、ものすごく複雑な気持ちなんだと思います。
またそれと同時に、
死そのものにに対する恐怖感や、
愛する人を近々失ってしまうかもしれない喪失感
もいつしか大きくなっていくのかな。
今日、この家族のリーダー格で患者さんの次に治療の決定権を持つ、
患者さんのお姉さんが、ふとこんな言葉を私に漏らしていました。
「彼女(患者)がちゃんと判断できる状態でほんと良かった。 だって、判断能力がもし無い状態だったら、私が最終判断をくださなくちゃいけなくて、そんなことになったら私、責任重大だし、どうしたらいいのか全く分からないもの。。。」
とっても素直な意見だと思います。
そして、そんな素の思いををナースの私に打ち明けてくれたこと、
私としてはちょっと嬉しかった。
私のことを信頼して頼ってくれている証拠なんだと、勝手に解釈しています!
「今、すごく辛い時期なのは分かるけど、その辛さを一緒に分かち合って支えあってくれる兄弟や家族がいるのは実はラッキーなことよ。一人じゃないから大丈夫。」
って私が言うと彼女、いままで我慢してたものが解けたのか、
ほろりと涙ぐんでいました。
こういう時にこそ、兄弟や家族のありがたみを噛み締められるんですよね。
同じレベルの気持ちを、同じ視点で分かち合えるのは、
結局自分の兄弟家族だけですから。
感謝祭、冒頭で、家族で集まる日って書きましたが、
この親戚家族で集まるイベントを面倒に思う人も世間にはたくさんいます。
感謝祭の親戚家族の集まりで、
家族や親戚と大喧嘩してERに運ばれる人も結構いるって話。
でも、今日せめてこの患者さんの家族には、
家族のありがたみを分かってもらうことができたかなぁ。。。
ちなみに、私の感謝祭ディナーは昨日でした。
すごーく寒かったので、家で彼と2人、湯豆腐大会して温まりました☆
日本的には七面鳥じゃなく、やっぱ鍋で団欒でしょ?!
日本から調達してきた、とっておきの幻の日本酒も飲んで。
心も体もすっごく温まりました~☆☆☆
今日も昨日に引き続き、同じ患者さん2人を受け持ち。
ブログに書いたけど、ほとんど座る暇も無いほど忙しくて、
残業1時間半。。。
昨日の時点で、気管挿管1件入り、
結局2人とも呼吸器に繋がれたことはお知らせしましたが、
最初から呼吸器に繋がれていた方の患者さん、今日は急遽、
気管支内視鏡検査入りました。
<気管支内視鏡検査についての解り易い説明はこちら>
ICUでは患者さんの負担を出来るだけ避けるため、
こういった大きな検査もベッドサイドで行います。
検査室に患者さんを運ぶとなると、ICU患者さんは重篤な状態なので、
運搬時のリスクがやはりとっても高いのです。
同種の胃カメラや大腸カメラもICUではベッドサイドで行われます。
更に、心臓のカテーテル挿入の手術とか、
気管支切開手術もベッドサイドでやっちゃいます!
一応、リスクを最低限に抑えるためにベッドサイドで行われる
この気管支内視鏡検査ですが、今日のこの患者さん、
検査直前に何もしてないのに血圧急降下!
これじゃ検査が出来ない!
ということで昇圧剤の点滴を即始めて血圧安定を確認してから、なんとか検査開始。
モニター画面に肺の内部(気管支)が映る。
この患者さんは私が見た中でも結構きれいな気管支。
私が昔見た患者さんの中では、
気管支にモコモコのカビがびっしりと蔓延ってる人とかいましたからね。
あれは、身の毛もよだつ衝撃的映像!
気管支内視鏡検査では、肺の中がどんな状態か見るだけでなく、
生体穿刺採取や、気管の分泌物(いわゆる痰?)の検査検体採取
も同時に出来ます。
ちなみに、気管の入口にある声帯を見るのがおもしろい!
声帯のYouTube映像リンクはこちら
上の映像は鼻からカメラ入れてますが、
今回の患者さんのように気管支挿管されてる人は、
気管内チューブの中を通って気管をチェックします。
ICUで働いてると、
たまにこんな興味深い映像を見ることができるので、楽しいです☆